横文字かるた 読み物
横文字かるたができるまで
会社のカタカナ語を、遊んで覚える
横文字かるたは、ちゃぶ台ゲームズの 3 本目のゲームです。もとにしたゲームはなく、管理人が会社に入ったときにおどろいた体験から考えました。作ったきっかけと、1 台の画面で 2 人が札を取り合うしくみなど、作りながら決めたことを書きました。
きっかけは、入社したときの「アジェンダ」
管理人が会社に入って最初におどろいたのは、横文字(カタカナ語)の多さでした。
勤め先は、スタートアップやベンチャー企業ではありません。歴史のある、日本の伝統的な大企業(いわゆる JTC)です。そういう会社なら、カタカナ語はあまり使わないだろうと思っていました。ところが会議に出てみると、「今日のアジェンダは」「その案にはアグリーです」「まずは関係者のコンセンサスを」と、みんながあたりまえのように使っています。
なんとなく言いたいことはわかる。でも、意味をちゃんと説明しろと言われると自信がない。そんな言葉が、たくさんありました。
使うためではなく、わかるために
正直に言うと、管理人は今でも、こうした言葉を自分から進んで使おうとは思っていません。「合意」と言えば伝わるところを、わざわざ「コンセンサス」と言わなくてもよいと思うからです。
それでも、だれかが話していることをきちんと理解するためには、意味を知っておいたほうがいい。会議で言葉の意味が引っかかると、そのあいだに話が先へ進んでしまいます。
とはいえ、単語帳でまじめに覚えるのは長続きしません。ゲーム感覚で覚えられたら楽しいのではないか。そう考えて作ったのが、横文字かるたです。
なぜ、かるたにしたのか
かるたは、読まれた文を聞いて、合う札を探して取る遊びです。横文字かるたでは、読まれるのは言葉の「意味」で、取る札は「言葉」にしました。たとえば「会議で話し合う予定の項目」と読まれたら、「アジェンダ」の札を取ります。
会議でカタカナ語を聞いたときは、言葉から意味を思い出します。かるたでは反対に、意味から言葉を探します。両方の向きで結びつけると、言葉が頭に残りやすくなります。そして、相手より先に取りたいという気持ちがあると、同じ意味を何度聞いても飽きません。
1 台の画面で、2 人が札を取り合う
ちゃぶ台ゲームズは、1 台のスマホやタブレットを囲んで遊ぶゲームを置いているサイトです。かるたも、端末を机に平らに置き、2 人で向かい合って遊ぶ形にしました。
いちばん不安だったのは、どちらが先に札を取ったかを、画面がちゃんと見分けられるかでした。ブラウザにわかるのは「画面のどこを、いつ触ったか」だけで、だれが触ったかはわかりません。そこで、画面を上下に分けて、上半分と下半分に同じ札を並べました。上半分を触れば向かいの人、下半分を触れば手前の人です。上半分の札は、向かいの人が読めるように逆さまに表示しています。2 人がほぼ同時に触っても、1000 分の 1 秒の単位で先に触ったほうが取ります。
ここがうまく動かなければ、作り方ごと変えないといけません。なので、見た目を作り込む前に、この判定だけの試作を作り、スマホと iPad で試しました。実際に試すと、札を取りにいった手のひらが画面に触れて、まちがって判定されることがありました。今は、札のない場所は触っても反応せず、手のひらのように広い面で触れたときは無視するようにしています。
パソコンは画面を触れないので、1 つのキーボードを左右に分けて使います。左の人は Q W E R と A S D F、右の人は U I O P と J K L ; で札を取ります。
200 語の言葉選び
出てくる言葉は 200 語です。アジェンダやエビデンスのような会議の言葉から、KPI・SaaS のような略語、パーパスやウェルビーイングのような最近よく聞く言葉までそろえました。管理人がふだんの仕事で耳にする言葉も、あとから 61 語足しました。公開したあとにも、JTC やエスカレーション、バイネームなど 13 語を足して、ちょうど 200 語にしています。
かるたにするときに困ったのが、意味の似た言葉です。「関係者の間でとった合意」(コンセンサス)と「相手の意見に賛成すること」(アグリー)が同じ場に並ぶと、どちらの札か迷ってしまいます。そこで、意味の似た言葉を同じグループにまとめ(全部で 39 グループ)、場には同じグループの札を 1 枚までしか並べないようにしました。これで、読まれた意味に合う札は必ず 1 枚に決まります。
200 語の言葉と意味は、すべて横文字用語集にまとめています。遊ぶ前の予習や、遊んだあとの見直しに使ってください。
本物のかるたに近づける
画面の中のゲームでも、遊んだ感じはできるだけ本物のかるたに近づけたいと考えました。
- 札を並べたら、10 秒だけ場所を覚える時間がある。競技かるたの暗記時間と同じ考え方です。この間に自分の側の札を触ると、その札だけが裏返って意味が見えます。相手の側には出ないので、こっそり予習できます。
- 取った札の場所は、空いたまま。本物のかるたも、取った札のあとに新しい札を足しません。8 枚がなくなりそうになったら、次の 8 枚を配ります。
- 残り 1 枚になったら、配り直す。最後の 1 枚は、どれが読まれるかがわかりきっていて、意味を知らなくても取れてしまいます。それではただの早押しになるので、新しい 8 枚に替えています。
- 「よーい」の掛け声はなし。本物のかるたにも「よーい」はありません。少し間を置いてから、次の文を読みはじめます。
読み上げは「ずんだもん」
読み上げの声は、VOICEVOX(無料で使える読み上げソフト)の「ずんだもん」にしました。ブラウザにもともと入っている読み上げの声は、端末によって声がちがい、少し味気なかったからです。200 語の読み札は、すべて前もって音声ファイルにしてあるので、どの端末でも同じ声で読まれます。
読み上げてみると、思わぬところでつまずきました。「札の場所を覚えましょう」の「札」が「さつ」と読まれてしまったのです。今は「ふだ」とひらがなで書いて、正しく読ませています。
作ってみて
横文字かるたは、仕様を決めてからひとまず完成するまで、2 日で作りました。そのあとも、覚える時間の合図の間(ま)を秒単位で直したり、札の文字の大きさをそろえたりと、遊びながら少しずつ直しています。
200 語の意味を 1 つずつ見直す作業は、管理人自身の勉強にもなりました。「ベンチマーク」と「マイルストーン」、「ダイバーシティ」と「インクルージョン」のように、なんとなく聞き流していた言葉のちがいを確かめ直すきっかけになりました。
カタカナ語を進んで使えるようになる必要はありません。でも、聞いたときに意味がわかれば、会議もニュースもぐっと楽になります。同僚や家族と、ゲーム感覚で遊んでもらえたらうれしいです。